■王とメイドの切ない恋物語■
嫌だよ、トーマ様と離れるなんて嫌。

私は、トーマ様が好きなんだって言いたい。

今、ここで言いたい。

なんで内緒にしなくちゃいけないの?

私、狙われてもいいよ。

トーマ様と離ればなれになるくらいなら、刺されたほうがましだよ。


「リリアを俺の家に連れて帰りたい。ダメか?」

トーマ様は眉をひそめて、沈黙している。





あぁ、こんなことになるなら、正直にラノス様に言い寄られて困ってるって、トーマ様に言っとけばよかった。

トーマ様だって、何か困ったことがあったら、すぐに言いに来いって言ってたのに。

私のバカ。

心配かけちゃだめだって、勝手に気を回したせいで、結局トーマ様を、悲しませてるじゃない。




私は、ラノス様の手をほどいた。

ラノス様も、ここまで来たら、私が逃げないと思ったのか、すんなり手を離してくれた。

トーマ様、どうか、どうか誤解しないで。

私が愛してるのは、トーマ様だけだよ。

しばらく沈黙していたトーマ様が口を開いた。



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