■王とメイドの切ない恋物語■
「トーマ様、ワインはいかがですか?」

「いただこうか」

と、堂々とした態度で、王の貫禄がたっぷりあった。

あの優しいトーマ様の雰囲気とはちょっと違う。

どっちが本物のトーマ様?


そう考えながら、私は、トーマ様のグラスに、ゆっくりとワインを注いだ。

「ありがとう、リリア」


私は、トーマ様が自分の名前を覚えていたことに驚き、すごく温かな気持ちになった。

私なんて、ただのメイドの1人なのに、覚えていてくれたんだ。

笑顔も、あの優しいトーマ様だ。


本当に、素敵な人。

胸が少し高鳴った。



ふと、視線に気がつき、その方向を見ると、エリザベス姫がいた。

その眼差しは鋭く、にらみつけているといった感じだった。

気のせいと信じたい。

エリザベス姫のワインのも、なくなりかけていたので、私は歩み寄った。

「エリザベス様、ワインはいかがですか?」

「結構よ!」


エリザベス姫は、あからさまに不快な顔をし、私から視線を外した。


私は何か不手際があったのだろうかとショックを受けながら、下がっていった。

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