■王とメイドの切ない恋物語■
怖くなる。

聞きたくない。

何も聞きたくない。

体がブルブル震える。

嫌なことばかり想像してしまう。



トーマ様は無事なんでしょ?

大丈夫なんでしょ?

ドアを開けたら、いつものように笑って、ただいまって言ってくれるんでしょ?



「すごい血なの。今、ドクターが処置してるから」

私は青ざめる。



すごい血なの…?

涙が、あふれてくる。


「リリアちゃんの家で、さっきの地震にあったみたい」

!!

さっきの地震?

そう言えば、トーマ様、帰りに、私の実家によるって言ってた…



「突然の揺れで、食器棚が倒れてきたみたい。妹さんか誰かが、下敷きになりそうになって、とっさにトーマ様が、かばったみたいなの」


私の妹を、守ってくれたの?

助けてくれたの?

本当の妹ができたみたいだって、トーマ様、すごく嬉しそうだった。

妹を守るために、自分が犠牲になったんだ・・・




マーヤさんが、震える声で話す。

「なんかね、食器棚が倒れたときに、ガラスが割れたみたいで、それが…全身に刺さって…」

マーヤさんが、目に涙を浮かべ言葉をつまらす。



嫌だ。

それ以上、聞きたくない。



「トーマ様に会わせて。今すぐ会わせて!」

私の涙声が、廊下に響く。


「でも、血が…」

「そんなの、関係ない。トーマ様に会わせて!」

マーヤさんは涙を拭きながら、扉を開けてくれる。

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