小悪魔王子に見つかりました


「……近いうち、ちゃんと伝えるから」

「うん」

浅海さんの気持ちがどうであれ、俺の気持ちをちゃんと伝えないといけないことはわかっている。

このままじゃダメだ。

羽芽のいう通り、浅海さんを困らせてしまうだけになってしまうから。

体育祭が終わったら、ちゃんと──。

「……ね、朱耶(あや)くん元気?」

「え、あぁ、元気そうだよ。最近あんまり帰ってこないけど。大学で彼女でも──あ、いや、」

しまった。

言いかけた言葉を慌てて飲み込んで、羽芽に目を向ける。

「……」

「兄ちゃんから、彼女できたとかは聞いてないから」

「フッ、いいよ気遣わないで。大学生だもん。朱耶くんかっこいいし」

その横顔が、あんまりにも愛おしそうにいうもんだから、少し調子狂ってしまう。

普段気の強い羽芽だから。

そんな風に、あからさまに落ち込まれたら、どうしていいかわからなくなる。

「羽芽は、伝えないの。自分の気持ち。俺にはワーワー言うくせに」
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