イジワル御曹司は偽のフィアンセ様❤︎
私が婚約者?
「本当に私が同行してよろしいのですか?」

十八時に取引先であるMメディックの塩原社長との会食が予定されているのだが、専務は秘書室に異動してまだ2日目の私を同行させると言ったのだ。
秘書の何たるかもよくわかっていない私を同行させるなんて専務は一体何を考えているのだろう。
最後の悪あがきだと思われてもいい。行きたくないものは行きたくないのだ。私は車に乗る寸前に再度尋ねた。
だが専務の返事は「同行しろ」だった。
「鴨居さんなら大丈夫」と汐田課長が背中を押すが、できることなら引き止めて欲しかった。
渋々車に乗ると車は動き出した。

「Mメディテックはしっているか?」

早速私を試すような質問を投げかける専務。
だけど私が答えられないとでも思っているのだろうか。
Mメディックは日本でも有数の医療機器メーカーだ。取引先も有名大学病院や公立病院が多く、最新医療機器の開発に取り組んでいる。
我が社とは古くから取引のある企業だ。
「わかってるじゃないか」と少し面白くなさそうな顔をした。
昨日から顧客のデータ入力をしていたのが役になった。
でも経理の仕事をしていれば大凡の取引先名はわかる。
「汐田課長の指導がすばらしいので」と答えると、専務は窓の方に視線を向け「君は昔から記憶力がいいからな」と呟いた。
確かに記憶力はいい方だ。
だけど学生の時の私は専務というか先生とあまり関わりを持たないようにしていた。
接点といえば数学の授業だけ。
担任でもなかったのになんでわかったのだろう。
気になったので、なんで知っているのか聞こうと思ったら、お店についてしまった。
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