イジワル御曹司は偽のフィアンセ様❤︎
さっきまでのほのぼのとした雰囲気はもうなくなって、ドキッとするような眼差しに変わっていた。

「専務？」

「今は敵意はないだろ？」

「そ、そうですけど……」

嫌だな。すごくドキドキしてきた。痛いぐらいだ。

「不思議だな。あの時は生意気な生徒だったのに……今は、俺の一番好きな人になっているんだから」

クスッと笑いながら私を見つめる甘い瞳が私の鼓動をより加速させる。
私だってあんなに苦手だったはずなのに、今はすごくときめいている。
やっぱり私は専務のことが……。
専務の熱い瞳に吸い込まれるように私は彼に近づいていた。
彼もまた距離を縮める。
このままキスするのでは？
そう思ったのだが……。

「あっ！」

「な、なんですか？」

まるで夢から醒めたように私たちは距離を取った。

「野菜。畑にナスとか胡瓜とかあれを収穫しなきゃならなかったんだ。
手伝ってくれる？」

「はい」

と返事をしたものの、そのわざとらしさが引っかかった。
なんで野菜なの？
なんだか拒絶されたように思えて私は胸がチクッと痛くなった。
< 80 / 103 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop