契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~

戻った日常

 じゅうじゅうと音を立てるフライパンの中にはよく炒めた野菜と肉、そこへ袋から出した麺をふたつ入れる。
 すかさずコップ半分の水を回し入れるとじゅわーと音を立てて湯気が上がった。それに蓋をして、晴香は小さくため息をついた。
 こうして麺を蒸すことでもちもちのおいしい焼きそばになると知ったのは高校生になってから。
 それまでは、そんなことは気にしないでただ、麺をかき回すだけだったからどうやってもほぐれない箇所があったっけ。それでも孝也はいつも美味しそうに全部食べてくれた。
 そう、いつも嬉しそうに…。
 でもそういえば、と晴香は当時のことを思い出す。
 料理ができるまでの間、健太郎はリビングでテレビを見たりゲームをしたりして待っていたのに、孝也の方はいつもキッチンに来て、料理をする晴香にあれやこれやと注文をつけた。それは、"ピーマンは少なくして"といったようなとるにたらないことばかりで、たとえ晴香がその通りにしなくてもべつに彼はかまわないようだった。
 だったら健太郎とゲームをして待っていればいいのにと晴香はいつも思っていたけれど、孝也はそのままたわいもないことを話しながらお皿を出したりお茶の準備をしたり、いろいろと手伝ってくれたから、なにを言われても全然嫌じゃなかったな…。
 そんなことを思い出しながら、晴香はフライパンの蓋をとり麺をほぐしながら炒めてゆく、そしてソースを回し入れた時、玄関の方で孝也が帰ってきた気配がした。
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