ふたつの羽根
深くため息をつくあたしに「その様子じゃ知ってるか」と先輩はフフッと笑った。
その微笑んだ顔がとてつもなく綺麗とあたしは思った。
初めて真正面から見る綺麗な顔、ストレートの長い髪を頭の上でギュッと縛り、スラッとした手足が校内一に引き寄せてるんだと思った。
だけど何故あたしの隣に居るのかは分からない。
「さっきは有り難うございます。…でっ何か?」
小さな声を出すあたしに「ってかさ、あたしもあの女と一緒だと思ってるでしょ?」と先輩はため息をつき鞄の中から小さなウチワを取り出した。
えっ、あの女?
あの女って、まさか彩乃って人の事?
隣でパタパタと小さなウチワを扇ぐ先輩から生温い風がフワッとあたしの所まで通過してくる。