ふたつの羽根
誰かとぶつかったと同時に叫び声が響く。
あたしは、ゆっくり振り向くと眉を寄せた田上が立っていた。
「あっ田上ごめん」
田上はあたしの抱えている鞄を見て「へー…」と声を漏らし
「りーなちゃん。来て即行帰るんだ」
と笑みを漏らす。
「えっ…」
苦笑いをするあたしに「もう担任、来てっけど」と教壇に指差す。
田上の指を辿って前を見ると担任が出席簿を開けている。
あたしは深く深く息を吐き鞄を抱えたまま椅子に腰を下ろす。
そんな姿を見た有亜は声を出して笑い始める。
「残念だねー逃げ出せなくて」
あたしは有亜を見て頬を膨らます。