お見合い政略結婚~極上旦那様は昂る独占欲を抑えられない~

共に生きていく

▼共に生きていく side高臣
 
 ――十月、夏の暑さもすっかり過ぎ去って、一番過ごしやすい気温になったころ。
 高梨園銀座店は、百貨店のリニューアルと同時に、無事にオープンを果たした。
 凛子の頑張りがあって、食品売り場では一番の目玉商品となったフルーツ大福は、連日完売を記録している。
 メディアにも多く取り上げられ、凛子が着物姿で働いている美しい写真が、ネットや雑誌に載るのはあまりいい気分ではなかったが、高梨園を守り抜いた彼女を誇らしく思う。
 宣伝効果で本店にも新規のお客さんが増え、二号店を出したことは大成功と言えるだろう。
 突然の婚約、慣れない生活、長年勤めた職場との別れ、ぶどう農家の娘からの思わぬやっかみ、そして幼なじみからの突然の求愛……この半年強は、彼女にとって目まぐるしい日々だっただろう。
 それなのに、どんなときも凛子は、華のような笑顔を浮かべているのだ。
 その笑顔は、どんな宝石よりも輝いて見える。
「高臣さん、おやすみなさい」
「おやすみ、凛子」
「明日はいよいよ結納の日ですね」
 凛子の可愛い顔が目の前にある。それだけでとんでもなく幸福度が上がってしまう。
 すでに眠そうな目でベッドに寝ころんだまま、俺の顔を覗き込んでいる彼女をぎゅっと抱き締めた。
 ――月日は巡り、彼女が言う通り明日はついに結納を行う日だ。
 ようやく、婚約という口約束だけではなくなるのだ。
 嬉しくてつい抱き締めた彼女の体温に、心の底から愛しさがこみ上げてしまう。
 本当は、ずっと俺の目が届く範囲に彼女にいてもらうことができたら、どんなに日々の不安が消えるだろうか。
「あの、高臣さん……?」
「少し……緊張するな」
「ふふ、高臣さんでも緊張したりするんですね」
「するさ、凛子関連のことでは。……ああでも、凛子の振袖姿を見れるのは嬉しいな」
「着物なんて毎日お店で着てるじゃないですか」
 ……そういえば、『和服美人な高梨園の長女』と宣伝される凛子見たさに男性客が増えていることを、咲菜から教えてもらったときは手に持っていた万年筆をへし折りそうになった。
 咲菜も『凛子の仕事っぷりと容姿は関係ないのに下品な記事。まあ確かに可愛いけど』と不満だけど納得、という様子だった。
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