お見合い政略結婚~極上旦那様は昂る独占欲を抑えられない~
「いや、そんな……」
 まさか謝ってこられるだなんて予想もしていなかったから、強めに断ろうとしていた私は、思わず動揺して声が小さくなる。
 数秒の沈黙の後、永亮が再び話し出す。
 『本当は、お前が幸せになれればそれでよかった。でも、突然政略結婚するなんて言い出すとはこっちも思ってもみなかった。お前、昔から猪突猛進だからな』
「う……それは、突然でごめん」
 『あまりに突然だったから、こっちも出るタイミングを完全に失った』
「なるほど……」
 再び気まずい空気がスマホ越しに流れ、私は永亮にかける言葉を探す。
 何もかも初耳のことだらけで、私は永亮のことを本当に何も知らなかったんだなと思う。
 永亮は私がお見合いをすると言い出したときも、婚約が決まったときも、一緒の場にいた。
 そのときの永亮の気持ちを想像すると、じわりと罪悪感がにじみ出てくる。
 永亮は弟みたいな存在で、職人としてのライバルで、高梨園を支える仲間だから……。
 告白されてただただ戸惑っていたけれど、私……仲間として永亮が大切だから、ちゃんと向き合わなければいけない。傷つけたり嫌われたりすることを恐れて、彼の気持ちを適当にしちゃいけないんだ。
「永亮。私、今までずっと気持ちに気づかなかったせいで、無神経なことたくさんしてたと思う。ごめん」
 『なんだよ、いまさら』
「でも私、婚約しててもしてなくても、永亮を仲間以上には思えないよ」
 『…………』
「伝えてくれてありがとう。勝手だけど、これからも今まで通り仲良くしたいです」
 きっぱりそう言うと、永亮はしばらく黙った。
 これで、永亮との関係性が終わってしまっても、仕方のないことだ。
 とても、とても悲しいけれど……。
 彼と過ごした幼少期が頭の中をよぎって一瞬切ない気持ちになったが、私はぐっとこらえて冷静さを保った。
 なんて返されるかどぎまぎしていたが、彼は再び意外な発言をして私を驚かせた。
 『予想通りのハッキリした返しだな』
「え」
 『お前の、相手を傷つけないためなら嫌われたっていいっていう、その精神。昔から変わってないな』
「な、何それ……。私は別に本当のことを」
 『俺はお前の不幸を求めてない。俺がただ、お前のことが勝手に好きで、勝手に幸せなだけだから』
「なっ……」
 『だから好きでい続ける。それだけの話だ』
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