俺様社長と溺愛婚前同居!?


「それで身を引いて出てきたの?」
「…………そう」

 それでいいと思ったはずなのに、悲しくて仕方ない。

 私たちの関係は雇い主と料理人だったはず。それなのにいつからか勘違いして、私は賢人さんに恋をしてしまった。

 優しく微笑みかけられたら嬉しくて、ご飯が美味しいと言われたら胸がときめいて。

 今日は何を作ろう、美味しいと言ってくれるかな、喜んでくれるかなと心を躍らせて彼の帰りを待っていた。


 寝ても醒めても賢人さんのことで頭がいっぱいになっていって、傍にいれると幸せだった。このままこの気持ちを隠し続けられたら、入籍して奥さんになれたかもしれないのに。

 でもそんなのダメだって思うようになって……。

 そんなときに神宮寺さんが現れて、私は神宮寺さんの代わりなんだって思い知った。

 いや、代わりになんてなれていない。そんなふうに思うのも申し訳ないくらいだ。

 本当に愛し合うふたりの邪魔をしていることに気がついて、悲しくなってしまった。物語の主人公はふたりだったのだと身の程を知ったのだ。


「でもさ賢人さんは、結花に結婚しようって言ってくれたんでしょ? 元カノのこと、好きだったらそんなこと言わないと思うけど」

「違うの……それは」

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