【完】爽斗くんのいじわるなところ。

そのまま、ヘッドロックほどではないけれど、
あたしは爽斗くんの腕に捕らわれてしまった。


ひゃぁー……っと声が出そうになるほどドキドキしてるのに。


「はやく行こーぜ」


といつも通りの様子であたしを急かす爽斗くん。



「あ、それと優心に弁当なんか作んなくていいから」


「、なんで?」


「そんな暇あるなら俺にちょうだい」


「え、あ……じゃあ二人に作れば」


「そしたら二つとも俺が食べることになるね。腹壊したら責任とれよ」


「えぇ……?」


「そんなこと言うのサヤせこすぎるってー。冗談きついわー」



後ろから追いかけてきた優心くんが突っ込んでようやく、爽斗くんの冗談だったってことに気づいた。



「なんだ、冗談か……」



くすっと笑うと、



「なんで冗談だと思うの? 俺のもんなんだよ、ぜんぶ」



人質になったみたいに爽斗くんの腕の中にいるあたしは、動くことさえ忘れて、
その言葉を頭の中で反芻した。


”俺の物”、”全部”……?


どういう意味か、なににたいして俺の物なのか。
ぜんぜんわからないけど、そんなこと言われたら……。


胸の奥からこみ上げる嬉しさを、必死で隠していると。

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