【完】爽斗くんのいじわるなところ。
6時間目、現代文の時間。


「では、この部分の主人公の心情をのべてください。出席番号3番の人」


「えー? わかんねーよ……」


「主人公の発言はもちろん、前後の行動や変化、情景描写をヒントにしてみてください。行動や目に見えるものは、口よりも心を語りますからね」


「はー……。主人公の気持ちなんか書いたやつにしかわかんねーって……」



……行動が心を語る、だって。



次々と生徒が不正解を答えている間、


あたしから離れて行った爽斗くんの気持ちを、想像していた。


そうすると、思い浮かぶのは


――『忘れ物の面倒くらい、俺が見てやるよ』


――『お前は俺の隣でボケーッとしてればいいの』


――『お前は俺の縄張りなのね』



たくさんの言葉とそれに結び付く行動が、

どれもこれも、意地悪で……優しくて。



ずっと、好きな人に向かって言う言葉じゃないと思っていた言葉が、裏返っていく。



……わからないの。


これが本当に嫌いな人に言う言葉なのか、わからなくなるの。


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