【完】爽斗くんのいじわるなところ。
正門に入って、
もうすぐ昇降口というころ。


「……」


「……」


なんだろう……、仁胡ちゃんが
あたしの顔、すっごく見てる……!


「ねぇ莉愛ちん、なんかいいことでもあった?」


「え……!?」


「なんていうか……にやけてるよ?」


「ほんとう……?」


やだ、しっかりしないと。

両頬を抑えて、表情筋をほぐしたりして。


「えーなになになに!そんな顔赤らめちゃって!なにがあったのー?教えてよ~」


楽しそうに弾む声に
あたしは大慌てで返す。


「なんでもないよ……!」


昇降口の階段を上がりきったとき、


仁胡ちゃんを挟んで対角線上に
爽斗くんの姿が見えて
心臓が跳ねあがった。


とんでもなく焦ったの。


だってどんな顔してあっていいか
わからないくらい
意識してしまって……。


爽斗くんに気づかれる前に
仁胡ちゃんを盾にして
すっぽりと隠れてた。



「え、どうしたの? 莉愛ちん?」


大きな声出さないで、バレちゃうから……!


そんな気持ちで、
小さくなるように俯いて
そのばしのぎのかくれんぼをしてやり過ごす。

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