極上社長からの甘い溺愛は中毒性がありました


   ★★★


  「はー…………」

 椿生はもう何度目かわからない大きなため息をこぼした。
 ずっと隠せるとは思っていなかった。
 早く彼女に打ち明けないと。
 そう思っていた。
 けれど、椿生の笑顔を見ていると、それが出来なかった。
 

 あれから彼女を忘れようと、仕事を遅くまでこなし、作曲の依頼も多めに請け負うようにした。そうすれば、彼女の事を考える時間も減るだろう。そんな風に思ったのだ。

 けれど、それは無理な話だった。
 どんな事をしても、畔の事が忘れられず、会いたいと思ってしまうのだ。

 全て自分の行いが招いた出来事だ。それは理解していた。けれど、やはり心から畔を愛していたのだと改めて感じてしまったのだ。

 そんな時に彼女は会いに来てくれた。
 モニターに映る彼女を見つめると、すぐにでもボタンを押して、招いてしまいたくなる。
 家に入れて、抱きしめて、「ごめん」と謝罪してしまいたくなる。

 けれど、それをグッと堪えて畔の姿を見ないようにした。

 自分は彼女には相応しくないのだ。
 虚像である神水椿生。
 そんな自分でしか、彼女と一緒に居たことがない。
 けれど嘘が大嫌いで、辛い過去を思い出してしまうと知っているのに、椿生は嘘をつき続けてしまったのだ。

 「俺には彼女の隣に居る資格なんてない………」

 そう呟いてから、また作業部屋に入ろうとした時だった。
 
 トントンッ。
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