極上社長からの甘い溺愛は中毒性がありました

 笑顔で彼に会おう。
 椿生が少しでも安心してくれるように。
 あなたが大好き、そんな気持ちを込めて、畔は一つ一つ丁寧に手話にした。

 すると、椿生の表情が歪んだ。
 瞳が揺れ、口元が微かに開いた。

 けれど、それを見る事が出来たのは一瞬だった。

 畔は椿生に強く強く抱きしめられていた。
 そして、彼が何か何度も呟いているのがわかった。
 口元を見なくたってわかる。椿生は「ごめん」と何度も言ってるのだ。

 彼はまだ自分を愛してくれている。
 自分と同じ気持ちなんだ。
 それがわかっただけでも、幸せだった。
 ゆっくりと彼の背中に腕を回し、畔も椿生を抱きしめかえす。

 久しぶりの恋人のぬくもりを感じながら、畔と椿生はしばらくの間、抱きしめ合った。彼の体の震えが止まるまで。
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