極上社長からの甘い溺愛は中毒性がありました

 畔がこの本を購入したのは椿生がこの小説の話をしていたからだった。椿生がこの物語を読んだかと思うと、真似したくなった。海と呼んでくれた理由の本がどんな話なのかを知りたかったのだ。

 畔は物語を没頭して読み続けた。頭の中で、その情景を想像しながら読んだ。けれど、そんなに長い時間ではなかった。その物語がとても短いものだった。

 内容は海岸で、主人公と友人が何事もない時間を過ごすという、とてもシンプルなものだった。海のほとりでの感じ方や何気ないやりとりがとてもほのぼのとしている。
 事件が起こる事もなく、感動や恋愛が描かれている事もない。
 けれどその何気ない、普段のやり取りが何よりも大切なのだ。畔はそんな事を感じられた。

 畔は、物語の余韻に浸りながら本を閉じ、少し氷が溶けて薄まってしまったアイスココアを一口飲んだ。その、ココアがやけに甘く感じられて、畔は一人微笑んでしまった。
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