極上社長からの甘い溺愛は中毒性がありました
「危なかった大丈夫だった?」
彼に抱きしめられているような状態になったまま、椿生を見上げた。すると、椿生は畔に向かったゆっくりと口を動かして「だいじょうぶ?」と聞いてくれた。その表情は、とても不安そうなものだった。
畔がコクコクと頷くと、「よかった」と微笑み、椿は畔から腕を外して少し距離を取った。助けて貰ったお礼を言わなきゃいけないのに、畔は彼の温かな体温が感じられなくなったのが悲しくなり、彼を見つめる事しか出来なかった。
すると、椿生は畔に向かって手を伸ばした。何を意味しているのかわからずに、その手を不思議そうに見つめていると、椿はぎこちない手話で『危ない。手を繋ごう。…わかる?』と、言ってくれた。畔が『わかります』と返事をすると、彼はニッコリと笑って畔の手を掴み、優しく手を握った。
手を繋いだ事で、ノートに言葉を書く事は出来なかった。けれど、畔は繋がれた手を見つめて笑顔になる。
手を繋ぐ時は優しいけど、助けてくれる時は強くがっしりとした頼れる男の人の手。
抱きしめられるのも嬉しかったけれど、今はまだこうやって手を握ってもらいたい。そんな風に思い、夜道でこっそり微笑んだ。