仮面夫婦マリアージュ~愛のない一夜でしたが妊娠しました~
「おめでとう御座います。無事に生まれたよ!!亜優さんに颯真さん」
「えっ?あ・・・」

俺が分娩室に入って僅か十五分ほどで、赤ちゃんが誕生した。
もっと時間がかかるのかと思ったが、亜優のお産はハイスピードで進んだ。
元気な産声を上げた立派な赤ちゃん。
しっかりと男の子の証も見えた。

槇村先生が亜優のお腹の上に生まれたての赤ちゃんを乗せてくれた。

「亜優…ご苦労様…」


「颯真さん…」

亜優の目には感動の涙が溢れる。
俺も感動して目を潤ませながら、彼女の瞳の涙をハンカチで拭った。

行為には愛は無かったけど、今の俺達には確かな愛が存在する。


「颯真さん、臍の緒切る?」

「え、あ…嫌・・・槇村先生に任せるよ…」

「そう、じゃ俺が切るね・・・」

赤ちゃんと亜優の繋いだ臍の緒が切断された。
俺もこうして、母さんから生まれたんだ…

母さんが俺を産まなければ、俺という人間は存在しなかった。亜優と出逢い、恋に落ちて、俺の腕の中で抱っこされるこの子も存在しなかった。

命って尊いモノ。
大切にしないと。


「槇村先生…長谷川さんも全開です…」

「分かった…」

長谷川さんって??

「杏南さんも産気づいてるの??」

「今日は満月だから…出産ラッシュなんだ…」





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