僕らの苦い夏の味
「はるか?」

「愛してるじゃ足りないよね」

「愛してるのは当たり前だろ」

「じゃあなんて言おうか?」

「愛してるのも当たり前。ずっとそばにいるのも当たり前。つらい時支えあうのも当たり前。……俺たちに言葉での愛情確認っていらないんじゃねーの?」


『愛してる』のそのうえ。

幸汰を縛り付けておくにはそんな言葉じゃ足りないんだ。

知らない間に、私の口元には笑みが浮かんでいた。


「帰ろっか。日焼けしちゃう」

「俺もこのトマト早く冷やして食べたい」


ばあちゃんに声をかけて、幸汰はカゴいっぱいにトマトを入れてこちらへやってきた。


「今日のおやつは冷やしトマトだね」

「俺がこの一番デカいやつ食べる」

「はいはい」


しっかりと、迷子にならないように。

どこにも行かないように、この手でかたく繋ぎとめておこう。

ゆらゆらと頼りなく、時にぶつかり合う二人の肩。

草むらにふたり。

まるで、誰も来ないで、とでも言うように。







とある夏の日。

君は夢を失って、

私は君を手に入れた。
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