僕らの苦い夏の味
「俺には、お前がいればいいよ。またこうやって畑に連れてきてくれ。そうしたら、何があっても頑張れる気がする」
ふわふわ、じんじん。
何、この感覚。
暑さのせいで、心臓が狂い始めてるのかも。
頭がぼーっとして、そのくせ今まで味わったことのない幸せに身を包まれている。
今まで、幸汰の野球を邪魔しないようにって、見ないようにしてきた感情が一つだけあった。
きっと、それの正体を、いま知ってしまった。
「私も、幸汰がいればいいよ。私のそばでだけ泣いて。誰にも見せないでね」
振り払うことのできない夏の暑さは、正常な思考や理性をも溶かしていく。
幸汰だけでいいはずがないのに、幸汰がいればいいやと思ってしまう。
恋なんてありふれたものじゃない。
この気持ちを、そんな軽い言葉でくくらないでほしい。
じゃあ、この感情はなに?