クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~

 あとは時期の問題だけ。
 どんなにすぐに辞めたくても、手掛けている仕事を放り出すわけにはいかない。社会人として勤めは果たさなければ。

 この都会でひとり、生きる意味。
 散々考えたけれど、答えは出なかった。

 ただ、自分らしくありたいと思った。

 これ以上自分を嫌いにはなりたくない。
 その為にもとにかくここを辞めて、それからのことは辞めたあとに考えようと決めた。

 お盆に実家に帰れば、向こうで暮らそうと思うかもしれない。
 そう思ったら心のまま、そうしようと。

 夕べ、涙と一緒に心に疼く様々なものを全て流し出した。
 体中の水分が無くなるほど泣きつくしたおかげで、心にはもうなんの迷いもない。からからに乾いてはいるが、なにもない分スッキリとしている。

 前を向いて、次の未来に向かって進むだけ。

「~ららら♪」
 時々歌ったりしながら三十分ほどした頃。

「あれ? どうした紫織」
 室井が、帰ってきた。
< 164 / 248 >

この作品をシェア

pagetop