クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~
***


「よっし、あと一時間くらいで終わるかな」

「先に帰っていいんだぞ。今までひとりでがんばったんだから」

「ダメですよ! 私のミスだもの。それに私がひとりで作業したのはせいぜい三十分くらいですもん。課長こそ疲れてるのに。本当に帰って大丈夫ですよ? 休んでください」

「あ、年寄り扱いしたな?」

 ひとりがいいなんて、ただの強がりだった。
 クスクス笑い合いながら、課長が来てくれてほんとうによかったと思う。なんだかんだと時折ふざけ合いながら進めると、時間も早く進む。

 時計が八時を回ったところで、さすがにお腹が空いてきた。

「どうする?宅配でも頼むか」
「そうですねぇ」

 などと言っていると、ひょっこりと光琉が顔を出した。

「あれ? 光琉ちゃん」
「はーい。夕ご飯の差し入れですよぉ。食べちゃいました?」

「おっ、気が利くねぇ」

 光琉はチャーハンや酢豚の入ったパックとペットボトルのお茶を出すと、広いテーブルの紫織の隣にちょこんと座った。

「お手伝いしまーす」
「ええ?」

「私だって、シール貼りくらいは出来るんですよぉ?」

 ニコニコと笑う光琉を見ながら、紫織は宗一郎が彼女を好きになる気持ちがよくわかる気がした。
 彼女は可愛いだけじゃなく、こんな風に優しくていい子なのだ。
 宗一郎のことを抜きにすれば、もっともっと親しくなることができただろうと思う。
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