永久の痕は紅く
第一夜 迷える堕ちた仔羊に
闇夜の空を飛ぶ一匹の蝙蝠が、とある古びた屋敷の開かれた窓に舞い降りる。
口にくわえた一通の封筒。
男がそれを受け取ると、蝙蝠はまた飛んでいった。
「……」
蝋燭の灯りが揺れる。
封を切った封筒の中には、真っ赤な薔薇の花弁が数枚。
開け放たれた窓から風が吹き込んで、花弁が宙を舞った。
手元に残った一枚に男が口づけると、花弁は瞬く間に枯れて風化してしまう。
何もなくなった指先から視線を窓の外に移して、月のない空を見上げた。
「今宵も…哀れな仔羊が福音を鳴らす」
抑揚のない声に応えるように再び強い風が吹く。
蝋燭が消えて唯一の灯りを失う室内に、紅い瞳が煌めいた。