眠れない夜は、きみの声が聴きたくて


お父さんは三カ月前と体型も含めてなんにも変わっていなかった。

思えば、中学に上がったばかりの頃にお母さんから紹介された時から、柔らかい雰囲気は変わらない。

ただ最初は正直、おじさんだと思った。

優しそうだけどメガネで小太りというどこにでもいそうな見た目だったし、お世辞でもカッコいいと言えないくらい普通だった。

だから、そのおじさんがお父さんになるなんて嫌だった。

ひとつ屋根の下で暮らすのも嫌だった。

馴れ馴れしく名前で呼ばれるのも嫌だった。

全部が嫌すぎたあの頃は、今の未央よりもひどかったかもしれない。

「もし友達と遊ぶお小遣いが足りなくなったら、こっそり言うんだぞ」

けれど、今はそんなに嫌ではない。

「あなた、聞こえてますよ」

「いいじゃないか。響がいてくれるから僕だって安心して出張に行けてるんだから」

ふたりの会話に私がいる。この感覚は久しぶりのことだった。

嬉しくて食事の箸が進む中で、未央が大人しいことに気づいた。ご飯じゃなくてプリンが食べたいと言って先にデザートを食べているけれど、そのスプーンも止まっている。

「どうしたの?」

声をかけると妹は真っ白な顔をして、食べ物をテーブルに吐いた。

「み、未央……!?」

お母さんとお父さんが慌てて傍に寄る。

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