友達の恋人 ~ 一夜からはじまる愛の物語 ~
渉が買ってきてくれたポテトは少し冷めていたけれど、心が温かくて、満たされる。


その日の午後、私は必要最低限のものだけをもって、渉の運転でゆっくりと渉の部屋に向かった。
残りの荷物は手配した引っ越し業者に次の週末に運んでもらうことにした。

渉の部屋は広くて二人で暮らしても、このまま子供が生まれても大丈夫な広さだった。
ただ、キッチン用品や食器類などは男性の一人暮らしらしく足りないものがあって、私たちは徐々にそろえることにした。渉も仕事がある。
私が買い揃えることもできたけど、そこは渉から強く止められている。

二人で一緒に買い物へ行って決めたいらしい。


元からあったセミダブルのベッドで一緒に眠るようになった私たち。
いろいろとこれからのことを具体的に考え始めて、私も渉と前に進もうとひとつひとつ話しているのに・・・渉の部屋に来てからも毎晩のように私の夢には香澄や姉が出て来た。

いつも二人は何も言ってはくれない。
私がどんなに声をあげても届かない。手を伸ばしても届かない。

やっぱり・・・こんなのダメだと言っているかのような夢に・・・私は毎晩うなされた。
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