友達の恋人 ~ 一夜からはじまる愛の物語 ~
展望台にはベンチがふたつ並んであって、渉と私は並んだベンチ、それぞれに座る。
私が泣き止んで帰るまで、渉は絶対にベンチからは立たなかった。

お互い挨拶をするわけでもない。話をするわけでもない。

次の日に学校であっても渉は決して夜の公園でのことを言わない。

いつの間にか、それは私たちには暗黙のルールのようになっていて、緑ヶ丘公園でのことは絶対に口に出さなかった。どちらかが言い出したわけでも二人で決めたルールでもないのに。私たちには自然にできたルールがあった。

なぜ、渉があの公園にいたのかは今でもわからない。

中学生の頃はよく泣いていた私も、いつの間にか公園に行くことが習慣のようになっていて、高校生の頃は、泣く場所ではなく、ただ、自分らしくいるために、自分を保つために行く逃げ場所のようになっていった。

高校生になって私はバスケ部のマネージャーに香澄と二人でなった。
渉はバスケ部員。
あとから思えば香澄はこの時から渉を好きだったのだと思う。
でも私にとっては意識している渉のそばにいられるマネージャーに誘ってくれた香澄に感謝さえしていた。
お互いに忙しくて帰宅するのが遅くなると、家が近い香澄と渉、そして私の3人で帰宅して、それぞれ家で夕飯を食べたり、お風呂に入ってから、私は公園へ向かった。
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