友達の恋人 ~ 一夜からはじまる愛の物語 ~
「里紗は・・・もう助からなかったのよ・・」
母親がうつむきながら言う。
「里紗はもう長くはないとわかって・・・私たちはあの子を家に帰すことにしたんだ。」
父が話を続ける。

姉の病状についても私は詳しく知らなかった。
だから、姉が帰ってきた記憶から、姉は病気がよくなったから帰ってきたのだと思っていた。
でも、事実はそこも違う。

「里紗は余命を宣告されて家に帰ってきていたの。あの子にはそのことを言っていなかったのに・・・なのに・・・」
「里紗は知っていたんだ。自分の命が長くはないことを」
母が顔を覆って泣き始めた。

父も少し瞳を潤ませながら話を続ける。
「里紗は自分の命が長くはないことを知って、それまで聞き分けがいい、優しい子だった分の反動のように、わがままになった。・・・でもそんなわがまますらも愛おしくて、私たちはなんでも受け入れようとしていたんだ。」
姉がいつも笑顔で優しかったことを私は覚えている。
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