友達の恋人 ~ 一夜からはじまる愛の物語 ~
「自分の命が短くてやるせないのに、体もつらくて・・・あの子の気持ちが痛いほどにわかった。だから受け止めたかったんだ。」
私にも両親の気持ちは十分に察することができる。

「母さんは仕事を休職して、里紗との最期の時間を一緒に過ごす選択をした。」
確かにあの頃、お母さんは家にいることが多かった。

「あの事故の日。」
父が言葉に詰まる。

辛い記憶。

それまで私たち家族が触れてこなかった記憶。
その記憶をよみがえらせると前に進めなくなりそうで、振り返らずに、見ないようにしてきた記憶。

その記憶を父は私のためによみがえらそうとしている。

「あの事故の日も里紗が玲奈に、意地悪をしたんだ。」
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