友達の恋人 ~ 一夜からはじまる愛の物語 ~
渉は5分ほど歩いてから、大通りでタクシーをひろい私をタクシーに乗せた。
がっしりとまわされていた渉の手から体が離れ急に自由になる体。
少し寂しく感じてしまう自分の気持ちを諭すように、自分の胸に手をあてて冷静になろうとした。

そんな私の迷いや葛藤すら見て見ぬふりの渉はすぐに私の横に乗ってくる。

「〇〇区の△△マンションまで」
運転手に伝えるとタクシーはすぐに走り出した。

タクシーのナビに表示されている到着時間を見ると今の場所からかなり近いらしく8分後に到着予定になっていた。

「渉?」
静かな車内に私の声がやけに響く。

恐る恐る渉の方を見ると、渉がやっと私の方を見た。

「明日、仕事は?」
「ないけど」
意外な質問に答える私。条件反射のように言ってしまったあとになり、嘘でもつけばよかったかと後悔する。
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