友達の恋人 ~ 一夜からはじまる愛の物語 ~
「彼氏は?」
「いる」
少し声が震えた。

でもさっき条件反射で本当のことを言ってしまったと反省した私はとっさに嘘をついた。

私の言葉の後にも、渉は何も言わないまま、刺さるような視線を私に送ってくる。

あまりにまっすぐすぎて、私は視線をそらした。
「いるに決まってるでしょ。私もいいお年頃だし。」

慌てて付け加える私の嘘。

つくづく私はひどい人だと自分で思った。

嘘つきな自分が嫌で、でもそうするしかなくて、どうしたらいいかもわからず泣きそうになるのを必死にこらえる私。さっきまで大泣きしてしまったことも後悔しているのに。これ以上、迷惑かけたくない。恥ずかしい姿をさらしたくない。
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