友達の恋人 ~ 一夜からはじまる愛の物語 ~
すでに外部の企業は来ているらしく、私は給湯室から来客用のカップにコーヒーを注ぎトレーにのせて会議室の扉をノックした。私だけでは運びきれず、主任と手分けして運ぶ。

会議室の扉を開けるとそこには15名ほどのスーツ姿の男女が向かい合わせで並び打ち合わせをしていた。

今度うちの広告会社が駅前の大きな広告用の看板に、アパレル会社の広告を出す仕事をうけたと噂で聞いていた。

かなり大きな仕事。

会議に参加する人の人数で仕事の大きさや、会社がその企画にかけている熱量が分かるようになった。

小さく頭を下げてから会議室に入り、一人一人にカップを配る。
はじめはこうしてお茶を出すのが苦手で、こぼしてしまったこともあった。
誰から配るべきかわからず、主任から注意されたこともある。

私も少しは成長したなと思いながらお茶を配ると「ありがとうございます」聞き違えるはずのない声が耳元で聞こえた。
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