Fake love(2)~離婚からはじまる社長の深愛~
「お邪魔します…」

豊は腹の虫に負けて部屋に入って来た。

「適当に座ってて…」

私はキッチンに向かう。
彼はソファに腰を下ろした。

「あ・・・」

私はソファに座らせたテディベアの存在をすっかり忘れ、慌ててリビングに戻った。

豊がテディベアを抱っこして、首許に着けていたステイを弄っていた。

「今でも…残していたのか…このぬいぐるみ」

「…別にいいじゃない…」

「いいけど…」

彼はローボードのフォトスタンドに目を向けた。

「写真までご丁寧に飾ってるんだな…」

「私の勝手よ…此処は私の部屋だもん」

「そうだな…」

豊はそう吐き捨てて、テディベアを私に渡した。

「お前は辛くないのか?こうして空の写真を飾って…俺は辛いから…捨てたぞ」

「そう…薄情なオトコね…さすがは私に離婚を迫った男だけのコトあるわ…」

「・・・空は愛していても…俺のコトは恨んでいるんだな…上出来だ」

豊は恨み言を吐く私を褒め称える。

「俺は腹減ってんだ…作るなら、さっさと作ってくれ…睦月」

豊は突然傲慢な態度を取って、命令した。

「言われなくても作るわ…」

私はテディベアをローボードにおいてキッチンに向かった。

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