君と一緒なら



「……希空ちゃんのことで……」


 私のこと……?


「希空ちゃんが……青野くんと……付き合っているんじゃないか……って……」


 えっ⁉

 私が真宙くんと……⁉


「希空ちゃん、ここ一ヶ月くらい、青野くんと一緒に登校しているでしょ」


「……うん……」


 真宙くんと一緒に登校している。

 わざわざ待ち合わせているわけではないけれど。
 登校時間が同じで。


 真宙くんは話していた。
 真宙くんは高校一年生になる春休みに家族で引っ越してきた。

 真宙くんの家と私が住んでいる家は、わりと近い距離にある。

 だから最寄り駅も同じ。
 同じ時間に顔を合わせれば自然に一緒に登校する。

 そのことに関して特に深い意味なんて全くない。



 それなのに……。

 私と真宙くんが……付き合っている……という噂が流れているなんて……。 


 まさか、そんなことに……。

 驚き過ぎて。
 何て言えばいいのか。

 見つからない。
 言葉が。



 桜ちゃんが言うには。

 私と真宙くんのことは。
 クラス中どころか、学年中に広まっているとのこと。

 真宙くんの存在は、同じ学年の人なら知らない人はほとんどいない。
 それくらい有名で存在感がある。

 その真宙くんと噂になっている、私。

 噂になり始めた頃。
『青野真宙と付き合っている女子の名前は?』となり。

『その名前は、麻倉希空』と、知れ渡ってしまったらしく……。

 そして『麻倉希空って、どんな子なの?』ということになり……。

『じゃあ、麻倉希空って子のことを見に行こう』
 という感じに……。

 こうして、いつの間にか興味本位で私のことを見に来る生徒たちがいるようになってしまったという。

 そんな感じで。
 私は見せ物状態のようになっている、らしい。



 桜ちゃんから話を聞いて。
『こんなこと、いつまで続くのだろうか』
 そう思うと不安になってくる。

 それだけではない。
 うんざりして疲れが出くる。


 これから、どうすればいいのだろうか。




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