君と一緒なら



 突然、聞こえてきた。
 その声に驚いた。


 この声は……。


 私は声がする方へ振り向いた。


「今、黒川さんが希空ちゃんに言っていたこと、
 全て聞いてたから」


 やっぱり。

 声の正体は真宙くんだった。


「希空ちゃんは俺の大切な人だから」


 真宙くん……。

 私のこと……大切な人って……。


「これ以上、希空ちゃんに酷いことをしたら、
 俺、黒川さんのことを許さない」


 真宙くんにそう言われた黒川さんはショックを起こしている様子だった。


「でも、一つだけ黒川さんに訊きたいことがある」


 訊きたいこと……?

 真宙くん、黒川さんに何を訊きたいのだろう。


「希空ちゃんの『あのこと』って?」


 ……‼


 そうだ、真宙くんが今の黒川さんの言葉を全て聞いていたということは……。


「あ……青野くん……」


 お願い‼ 黒川さん‼
 真宙くんに私の過去を言わないで‼


「なに、言えないの?」


 真宙くんも……‼

 これ以上、黒川さんに訊くのはやめて‼


「俺は平気だけど」


 え……。


「俺は希空ちゃんの何を聞いても
 希空ちゃんのことを嫌いになったり幻滅したりしないから」


 真宙くん……。

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