君と一緒なら



「……嘘……なの……」


 え……。


 よく聞こえなかった。
 黒川さんの声が小さくて。

 けれど。
 確かに黒川さんはこう言った。

『嘘』って……。


「本当は……
 麻倉さんの過去のこと……
 ……何も……知らないの……」


 え……⁉


「試しに麻倉さんにそう言ってみたら、
 麻倉さんに反応があったから……
 それで、私……」


 そ……そんな……。


 それじゃあ、私……。
 黒川さんの嘘にまんまと……。


「……そう……」


 呟くように。
 そう言った真宙くんの一言。

 その中には。
 何かが込められているよう。


「行こう、希空ちゃん」


 真宙くんはそう言って、その場から離れかけた。


「青野くん……‼」


 そんな真宙くんを見て、黒川さんは慌てて真宙くんの方へ駆け寄った。


「青野くん、ごめんなさい‼
 私、麻倉さんにそんなことをするつもりはなかったの‼」


 必死に言う、黒川さん。


 そんな黒川さんのことを冷めた様子で見ている真宙くん。


「じゃあ、俺たち行くから」


 真宙くんはそう言って、黒川さんから目を逸らし。
 私の手首を掴んで、そのまま歩き出した。


< 41 / 54 >

この作品をシェア

pagetop