優しい愛に包まれて~イケメンとの同居生活はドキドキの連続です~【リニューアル版】
それから数日経って、ひなこちゃんが私に話しかけてきた。


『大家さん、私、ここを出ます。颯君の顔見るのつらいし。あなたのことも、これ以上嫌いになりたくないですから…楽しくもないのに笑うの…もう疲れたから』


ひなこちゃん…


久しぶりに話しかけてくれたのに、そんなこと…


『楽しくない…?ここにみんなといるのは』


『…はい。颯君があなたを見てるのが苦痛で仕方ないです。颯君が好きだから。だからもうこれ以上は…颯君とも、あなたとも一緒にいたくないんです。今日、夕方のバスで出ていきます。最後に、みんなで旅行に行けて良かったです。お世話になりました…颯君にも、みんなにもよろしくお伝え下さい』


『ちょっと待って。ひなこちゃん、本当に出ていくの?こんなに急に?』


『はい、止めても無駄です。一人暮らしする部屋ももう見つけてますから』


驚いた…ずっと考えてたんだね。


ひなこちゃんの決意は固いようだった。


『…わかった。ひなこちゃんの新しい人生、応援してるよ。本当に…ずっと一緒に暮らしてたのに、何もしてあげられなくてごめんね』


『…ありがとう…ございました』


今日は、3人ともいない、お義母さんも。


そんな日を選んで、ひなこちゃんは出ていった。


颯君にさよならするの、つらいんだよね。


その気持ちはすごくわかるよ、私だってあの3人と別れるの、やっぱり…


でも、私、大家としては失格だ。


智華ちゃんもひなこちゃんも支えてあげられなかった。


すごく情けない大人だ。
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