行き着く先は・・
(十三)

••父親の態度


いすずと暮らし始めて一年半が過ぎた。

この一年半の間
何度も俺の実家に通った。

だが、父からは
俺といすずの再婚を承諾する言葉は
もらえなかった。

俺は、少し簡単に考えていた。

俺が独身であることを心配している
俺がバツイチであることを心配している
俺に子供がいない事を心配している
と、だから元妻だった、いすずとの
再婚であっても喜んでくれると。

最初は、希空に対しての罪悪感から
反対しているのだと。

だが、父は許す処か
話しもしてくれなくなっていた。

そんな父の肩を持つように
母も、
「そっとしておいて。」
と、言う。

半年位は、俺も黙っていたが
年末実家に行った時
「いい加減にしろよ。
何が気に入らなくて
話しもしないし
再婚の許可もしてくれないんだ。」
と、怒鳴ると
いすずは、
「やめて。」と、言ったが
いすずだって気持ちの良いものでは
ないはずだ。
忙しい中でも実家に行くときは
時間を調整してくれる。

俺も慣れない工場勤務に
戸惑いながらも
毎日を必死で過ごしていた。

課長のクラスだから
シフトには、入れないが
朝早くから夜遅くまで仕事をこなす。

途中から来た奴だと
舐められるわけにも行かないから
必死にやっている。

いすずは、相変わらず忙しいようで
お互いが無理をせずに
早く帰れた方が食事の準備をしたり
掃除、洗濯、二人でやったりしている。

会話は無くても
元夫婦だからか、お互いの事はわかる
だが、術後だから
いすずには、無理をしないように
話しはしていた。

たまに早く帰って
真っ暗な部屋に入ると
希空が料理をしながらキッチンから
お帰りなさいと顔を出して
駆け寄る姿を思いだす。

希空は、料理も上手だった。

そんな希空が退職したと聞いた。

元気にしているだろうか?
経理課の奴らには
俺のせいで希空は、辞めたと
俺さえ転勤して来なかったらと
言う人間も多かったときいた。

俺も··どうして····と
散々···考え····悩んだ······
だけど、俺はいすずといる事を
選んだんだ·····

週末は、いすずとベッドを共にする
毎日、同じベッドで寝ているが
平日は、どちらかが先に寝ているから
週末は、愛し合って眠りにつく。

いすずは必ず
「悠人、避妊をしてね。」と、言う
俺は、
「いいじゃないか。」と、言うが
いすずは、
「神田のご両親から
認められていないんだよ。」と、言う。

再婚だから当たり前かも
しれないが、新鮮味などなく
なが~く連れ添った夫婦のような
関係だと思う。
その事に不満もなければ
別段、喜びもなかった。
< 44 / 116 >

この作品をシェア

pagetop