行き着く先は・・
(十七)

••二人の経緯


母が搭乗ゲートから出てくる····

母に修吾さんを紹介しようと····

母と修吾さんの動きが止まった。

不思議に思いながら
「お母さん?修吾さん?」
と、声をかけると
「あっ、ごめん。時差ボケかな?」
と、母。
「大丈夫?あっ、お母さん
こちらが秋山 修吾さん。
とてもお世話になっている方。」
「修吾さん、母の茜です。」
と、言うと
「「青山です。秋山です。」」
言いながら
頭を下げて名刺を交換していた。

とりあえず移動することになり····

いつもの母ではないし
私の知る修吾さんでもない

私は、車の中で二人に訊ねた。
「お母さん、修吾さんと知り合い?」
「···········」
答えない母の代わりに
修吾さんが答えた····内容は·····


母と修吾さんは、昔付き合っていた。

母は、両親の経営する花屋を
拡大することと自分自身も
師範の免許や花についての勉強に
力を注いた。

一方、修吾さんもお父さんから
継いだ仕事に力を注いでいたが
日本では、自分の思う仕事が出来ないと
判断した。

だが、花屋の仕事にも
花についてにも力をいれている母に
どうしても一緒に行って欲しいと
言うことが出来ずに
お父さんの薦められた女性と
結婚してイタリアに渡った。

恋人だと信じていた人に
いきなり別れを言われ捨てられて
打ちひしがれる母を
支えたのが父だった。

当時の事で
お互いが知らなかった事が
この話で見えて
二人は、言葉を失くした。

私は、私の小さい頃に
父を亡くしているから
父と母が、仲がよかったのか
愛し合っていたのか
わからない。
でも、愛し合って私か
生まれたと思いたい。

母は、
「真一(父・しんいち)は、
あの時、しゅう、秋山さんから
捨てられて自暴自棄になっていた
私に寄り添い、励ましてくれた。

真一もフラワーアーティストの
勉強を一緒に学んでいた人だった。

だけど、教室にも来ない私を
心配してくれて
当時の先生も心配してくれていたから
真一に様子を見て来て欲しいと
頼んだみたい。

彼が来た時·····

私は、ソファーに座ったまま
だったと。
寝ているだけなのか
わからなかったが
真一には、息をしていないと
思えたらしい。
真一に抱かれて病院に連れて行かれて
治療をして貰った時に
涙をボタボタ落とす私に
ほっとしたんだよ
と、少し経ってから
真一から······

当時の事は、あまり記憶がないの。

真一が、身代わりでも良い
茜に気持ちがなくても良いから
自分をそばに置いて欲しいと
言ってくれて
やっと、自分の情けなさに気づき
真一に対して失礼だと解り
気持ちを切り替えたの
真一には、そんな事で真一を
利用するなんて出来ないと
断ったんだけど
頑固でね、聞き入れて貰えなかったの」
と、最後は当時の父を思い出したのか
クスッと笑いながら話してくれた。
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