行き着く先は・・
(二十)

••日本へ


リタのお店のリフォームが
(自分と言うか母?修吾さん?
の店であるがリタの店と言ってしまう
希空です。)

始まり、山寺さんとの電話やLINEの
やり取り、母に訊いたり
修吾さんに訊ねたりと
バタバタした毎日を送っている。

あの日から
修吾さんも母も
聡吾さんについて触れない。

私も頭の片隅に追いやって
考えないようにしている。
と、言いながら
考えているが·····

聡吾さんが、どんな風に
乗り切るのか
決断を待つしかない。

やはり、修吾さんを許せないと
なると母ともこのままだろう。

もちろん、私とも
関わる事はない···はず····

ぶっきらぼうだが
優しくて
一緒に食事をしても
気の聞いた話しなんかないけど
苦にならない聡吾さんとの
空気が好きだったなぁ、と。

それも····失くなる····
仕方ない····と、頭の中で
わかってはいるが····

あ~あ、もう考えない。

何度も戦いながら
日々を過ごしていた。

そんな日々が、ひと月を過ぎた時
リフォームも着々と進行している中
修吾さんに、
「一度日本へ戻ったら」
と、言って貰えた。

母の事もだが
ひかりの事も気になるし
自分の荷物の事も気になっていたから
修吾さんの言葉に甘えさせてもらった。

きっと、修吾さんに心配かけているんだ。

まもなく、母と修吾さんは、
入籍をする。
婚姻届のやり取りをして
日本では母が提出する。
イタリアでも日本国総領事館に
提出する。

私は、
「お父さん、ありがとう。
それと、心配かけてごめんなさい。
日本へ少しだけ戻ります。」
と、言うと
修吾さんは、ハッとした顔を
したが····瞳に涙が輝る
「···はじめ····て····
お···とう···さ···んて···呼ばれた。
あり···がと···う···。」
と、言ってくれたから
私を首を何度もふると
「辛い思いをさせてごめん。
日本で、ゆっくりしておいで」
と、言った。

修吾さんだって辛いはずなのに
自分だけが逃げるのは
申し訳なく
そう伝えると
「私は、大丈夫。」
だと言う。

この人は、ずっとこうやって
我慢しながら
全てを諦めてきたのだろうと
思うとたまらなくなり
父になる・修吾さんを
そっと抱き締めた。

修吾さんの体に少しだけ力が入ったが
私の手をポンポンと
してくれた。

そんな修吾さんに
私は涙を拭きながら頷いた。

山寺さんは、そんな私に
連絡は、どこにいても
携帯があれば大丈夫だと
言ってくれた。

私は、母とひかりに連絡をして
日本へと戻った。
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