結婚から始めましょう。
頭が重い……
全身がだるい……

そんな煩わしさに抵抗して、うっすら目を開けた。ここはどこだったか……

少しずつ意識がはっきりしてくると、誰かに手を握られていることに気が付いた。その人は私の手を握ったまま、ベッドに伏せて眠っているようだ。

「蓮……さん?」

ひどく喉が渇いていて、うまく声が出てこない。けれど、そんな小さな声が届いたのか、私の手を握っていた彼の手がピクリと動いた。
続いてゆっくりと体を起こすと、私の方を向いた。

「桃香……桃香、大丈夫?よかった……」

点滴の管に気をつけながら、そっと抱きしめられた。

「桃香、桃香……」

蓮はまるで私の存在を確かめるかのように、抱きしめる腕に少しだけ力を込めて、何度も何度も名前を呼んでくる。私はされるがままでいた。



暫くして落ち着いたのか、蓮は「ごめん」と小さく謝ってそっと体を離した。

「桃香、大丈夫か?」

私が首を縦に振ると、やっと安心したのか、表情を和らげた。



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