結婚から始めましょう。
「意外でしたか、この車は」

「あっ……と、蓮さんは背が高いので、もっと大きな車だと……す、すみません」

「謝ることないですよ。可愛いと言ってもらえて、嬉しかったですから。この車は、母から譲り受けたものなんです」

前を見据えながら、蓮が話してくれる。

「母はこの車の外見が気に入って、何かの折に自分へのご褒美にと購入したそうです。長年大切に乗っていたのですが、社長を退任する頃、その後の生活を考えて手放すことにしました。
ですが、いざ売ろうとした時、二の足を踏んでいるのがわかって、それならと、私が譲り受けたんです。ドイツ車はきちんと手入れをしてれば長く乗れるんですよ。私が手入れをしつつ、たまに母も使えるようにしているんです」

「なんか、いいですね。お母様も蓮さんが乗ってくれて嬉しいでしょうね」

学生の頃、友人が話していたことを思い出した。一台の車を長く乗る人は、付き合う女性を大切にする人だと。
逆に次々と乗り換える人は、会うたびに隣にいる女性が変わっていると。

蓮の話を聞いて、あの話の真意を考えた。もしかしたら一理あるのかもしれない。
蓮の聞かせてくれた話には、誠実さを感じられた。


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