医学探偵S
医療File3 記憶
時計の針が五時を過ぎた。仕事が終わる時間だ。和都はグッと体を伸ばし、帰る支度を始める。

「ホームズさん!今日一緒にご飯食べに行きませんか?おいしいパスタのお店があるって友達から教えてもらったんです」

和都が結弦に訊ねると、結弦は「俺と行っても面白くないだろ。友達でも誘え」と言う。和都は「ホームズさんがいいんです!」と食い下がった。仕事を一緒にするのだからプライベートでも仲良くなりたいと思ったのだ。

「仕方ないな……」

結弦はため息をつきながら言ってくれた。和都は「やった!」と喜ぶ。その時、ガチャリとドアが開いた。

「ホームズいるか〜?」

和都が振り返れば、汗をハンカチで拭きながらスーツを着た四十代ほどの男性が入って来る。相談者ではなさそうで、和都は「どちら様ですか?」と緊張しながら訊ねた。すると、相手より先に結弦が口を開く。

「江藤(えとう)刑事……」

「えっ?刑事?」

驚く和都に、江藤刑事は「久しぶりだなぁ。ホームズ」と笑う。結弦は知り合いなのだと教えてくれた。
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