触らないでよ!〜彼氏に振られたその日、女の子(?)に告白されました〜
告白されました。
ーーまたやっちまったぜ。



「SARASA」を出て心のなかで愚痴ってみる。

良い歳の女が失恋ごときでかっこ悪い。
頭のなかではそう思うのに、心がついていかない。

喪失感がすごい。
たった半年一緒にいただけなのに。





酔いが一瞬で覚めてしまいそうな冷たい風が首を掠める。

マフラー、してくればよかったな。
いくら10月といえど、夜は冷える。



駅に向かって歩こうと足を一歩前に出すと、後ろで「SARASA」のドアが開いた。

磨りガラスとぶつかって夜の繁華街に細かい鈴の音が響く。



「あ、よかった、ミカさん」





振り向くとドアに手をかけた澪ちゃんがいた。



「スマホ、忘れてましたよ」




「はい」と見慣れた自分のスマホを手渡される。
カウンターに置きっぱなしにしていたのだろうか、気づかなかった。



「ありがとう、ごめんね」



受け取ったスマホをバッグにしまう。



「大丈夫ですか?」



澪ちゃんがまた、私の頭を撫でた。
身長が低いから撫でやすいのだろうか。
サラサさんと同じように、いつも私のワンパターンな失恋話を聞いて慰めてくれる。
< 6 / 259 >

この作品をシェア

pagetop