エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~


片手は肩を、もう片方の手を私のお腹に回した四宮さんが、うなじのあたりに唇を押し付ける。
直後、皮膚とは違う感触が這い……それが四宮さんの舌だと理解するなり、顔が一気に熱を持った。

「あ、あの……」

後ろから抱きしめられている体勢なので、自分の手の位置をどうすればいいのかわからない。

困りながらも、肩に回っている腕をギュッと掴むと四宮さんが笑ったのが首に当たる空気の振動でわかった。

「鈴奈。俺の名前は知ってるか?」
「え、あ……はい。もちろん」

うなじを這う感覚に全神経が集中していたので、返事が遅れる。
四宮さんは私の耳の後ろに唇で触れながら続けた。

「呼んでみて欲しい」
「え……っ」

それは……だって、無理だ。
四宮さんを名前で呼ぶなんて、そんなこと……恐れ多い。

恥ずかしさもあるし、そんな呼び方はまるで自分と四宮さんを同列に思っているように感じ落ち着かない。

いや……でも、四宮さんがそれを望んでくれるなら名前で呼んだ方が……でも。

私がたくさん考えている間も、四宮さんが耳やら髪やらにキスし続けるせいで答えがまとまらない。

「悪い。そんなに困らせるつもりはなかった。……そのうちにでいい」

そんな私に呆れたのか、四宮さんは少しおかしそうに笑い……それから耳に舌を這わせた。


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