エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
四宮さんの部屋に入るのは初めてにもかかわらず、あまり緊張は感じなかった。
緊張よりも興味が勝ったというのが正しいかもしれない。
特に、四宮さんが好きだという本やCD、DVDが並ぶ本棚を見るのは楽しかった。
ひとり暮らしを始める前の……つまり、今の私くらいの年齢だった頃の四宮さんが好んで見聞きしていた物を知れるのは嬉しい。
「これ、とても人気でしたよね」
本棚の一角に設けられていたDVDコーナーから、一枚のケースを取り出す。
落下してくる隕石から地球を守るために宇宙飛行士が立ちあがり奮闘する洋画は、私が中学生の頃、上映されていたものだ。
私は見ていないけれど、クラスも世間もみんなが騒いでいたのでタイトルとあらすじは知っていた。
「気になった映画は、基本的に映画館で見て、気に入ったものだけ手元に残してるんだ。鈴奈は映画は好きか?」
私の一歩後ろに立っている四宮さんに聞かれ、うなずく。
「はい。あまり映画館まで足を運んだことはないですけど、好きです。初めて行ったときにはキャラメルポップコーンとかチュロスの香りにわくわくしました。席について、照明が落とされて本編が始まるまでの時間が好きです」
「じゃあ、今度一緒に行こう。ちょうど見たいと思っていた作品の上映が始まるんだ」
「はい。あ、でもホラーとかパニック系はちょっとお付き合いできないかもしれません……」
怖いのは苦手で、と説明した私に、四宮さんが笑う。
「ああ。わかってる。道端に出る幽霊を信じるくらいだからな」
いつかの、塚田さんのおばあさんのことを言われ、恥ずかしくなる。
今考えればあれはたしかになかったかもしれない。
手にしていたDVDを元の位置に戻していると、不意に後ろから回ってきた手に抱き寄せられる。