エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~
そういえば氷室さんもフレンドリーだったことを思い出す。
浅尾さんはお酒が入らなければ他のテーブルにまざったりしないだろうけれど、氷室さんは素面でもするレベルだ。
一緒に食事に行ったときも、隣のテーブルに座るカップルに話しかけていた。
『せっかく飯食べに来てるのに、ずっとソシャゲ? 彼女、可哀想じゃん』
知り合いなのかな?と思うほど自然に話しかけるものだから、しばらく黙って見ていたけれど、カップルの驚き方から違うとわかり、慌てて謝ったのは言うまでもない。
氷室さんは気になったことはすぐ口に出す癖がある。
その部分に関してはまるで子どもだ。
「でも、どうして鈴奈ちゃんが氷室さんと知り合いなの? 年、結構離れてるよね?」
不思議そうにする浅尾さんに、先日、四宮さんにしたような説明をして、納得してくれたところで、九時三十分を指している時計に気付く。
そろそろ開店準備にとりかからないといけない時間だ。
水曜日は、不足品の発注と、前の週に発注しておいた品が届くからなにかと忙しい。
先週発注しておいたパンフレットが届いているようなら、それを補充して、あと社員用のインスタントコーヒーの粉末の残りが少なかったから、それを発注しないと。
あとは、なにか不足しているものはあったっけ……と考えながら、店舗に繋がるドアノブを握ったとき、「あ、鈴奈ちゃん」と浅尾さんに呼び止められる。