エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~


私の一日は、五時半のアラームで始まる。

洗顔とメイクを済ませたあと、通勤服に着替え、髪を整える。洗濯物は二日に一度。寝る前にセットして朝干す。

六階にある部屋は南側にベランダがあり日当たりがいいからよく乾く。

それから部屋を出て、隣の部屋のインターホンを鳴らす。
このマンションに移り住んでからかれこれ四年間、ほとんど毎日鳴らしているけれど、氷室さんがこれで起きたためしは過去一度もない。

二度目のインターホンは押すだけ無駄だと早々に諦め、あらかじめもらっている合鍵で部屋に入り、寝室のベッドで気持ちよさそうに寝ている氷室さんを適当にゆする。

氷室さんの部屋でふたりぶんの朝食を作り、溜まっている洗濯物を洗濯機に放り込んでスタートボタンを押したあと、まだだらだらと寝ている氷室さんを今度こそ起こし、ふたりでダイニングテーブルを囲むのがルーティンだ。

これを友達に話すと、『いや、付き合ってないのにそれはおかしいって。ないないない、ありえない』と真顔で言われてしまうのだけど、私的にはもう慣れてしまっているので特に負担だとは思わない。

言うなれば、私にとっての氷室さんはもう家族みたいなものだ。兄……というよりは弟の方がしっくりくるのは秘密だけれど。


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