花火大会 〜14年目の永遠の誓い 番外編(4)〜

「初めまして! 寺本志穂です。いつも、こちらこそ陽菜には仲良くしてもらってます。今日は水入らずのところをお邪魔してしまって、すみません!」

 勢いよく挨拶してぺこりと頭を下げるのだけど、きっと、お作法なんてまったくなってない。
 ううん。仕方ない。そういうタイプじゃないもの、私。
 頭を下げた拍子に自分が手に持った和菓子屋さんの紙袋が目に入る。

「これ、つまらないものですが」

 手土産を差し出した。

「あらあら、そんなお気遣い良かったのに」

「いえ、あの浴衣も着せていただけると伺って、母が持って行くようにと」

 そう。今日は私も浴衣を着せてもらうのだ。買ってもらったばかりの新しい浴衣は大きめの鞄の中に風呂敷に包んで入れてある。

「うふふ。それじゃあ、うんと綺麗にしなくっちゃね」

 おばあさんはにこやかに笑いながら、手土産を受け取ってくれた。

「じゃあ、早速着付けましょうか。陽菜、志穂さん、先にお借りするわね」

「あ、お願いします」

 ペコリと頭を下げる隣で、陽菜が

「行ってらっしゃい」

 と笑顔で手を振ってくれた。
 叶太くんが幸せそうに、とろけそうな笑顔で陽菜を見ていた。

 いつもの事なのに、非現実的な場所だったせいか、2人が浴衣姿だったからか、何だかとても印象に残った。
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